Deal・ミズホ武芸帳
第11話 「越えるべき者 − 死の街 −」
俺は死の街の中心部、霊廟の前まで馬を進めた。
奴は必ずあの中にいる。霊廟から放たれるひときわ強い邪気が、俺にそう確信させる。
俺に気付いて集まってくる雑魚どもを振り切り、一気に霊廟内へと飛び込んだ。
そこに・・・奴はいた!
元は立派だったろうローブに身を包み、その身は干からびたミイラのような姿。
それは自らアンデッドとして転生した、邪悪な魔導師のなれの果てリッチ!
一見ただの老人のミイラに見えるその姿。
しかしその腕から繰り出される攻撃は熟練の戦士のそれに匹敵し、
その秘めたる魔力は未熟な冒険者を一瞬で焼き殺すほどの強大さだ。
今の俺の実力で倒せるかどうかギリギリの相手だ。
俺は素早く周りを見回した。
背後から、先程振り切ったアンデッド達が迫ってきている。
霊廟内にはリッチの他にも数体アンデッドがいる。
この狭い霊廟内で戦うことは不利だと判断した俺は、一旦霊廟から出ることにした。
そしてなんとかリッチと一対一で戦える状況にしようと、奴を死の街から誘い出すことにする。
地形を利用して駆け回り、アンデッドの群れを徐々に分断していく。
そんな俺の様子をリッチは時折笑いながら眺めていた。
ふん。そんな余裕見せていられるのも今のうちだけだぜ!
やがてリッチの周囲にはスケルトンやシェイドなどの下級アンデッドしかいなくなった。
余裕の表情で俺を見ていたリッチに俺は駆け寄り、思い切りハルバードを叩き付けてやった。
すると奴の表情が変わった。俺の攻撃が予想していたより効いたのだろう。
奴は憤怒の表情を浮かべ、俺に対して魔法による攻撃を仕掛けてきた。
突然の脱力感。魔法による呪いをかけられたようだ。
そして俺の全身は巨大な炎に包まれた! これまでにない程強力なフレイムストライクだ!
俺は全身に大火傷を負った。直後に背後からエネルギーボルトが飛んでくる!
意識が遠のく中、夢中で回復ポーションを飲み、包帯で治療を始めた。
ポーションのお陰で少し体力が回復したが・・・しかし包帯治療の効果が現れるにはもう少し時間が掛かる。
今一度フレイムストライクを受けたら、待っているのは確実な死だ。
俺は必死に馬を駆り、魔法が届かない距離を保ちながら街の外まで誘導しようとした。
その時! 俺の周囲の空間が揺らいだかと思うと、突然大爆発が起きた!
エクスプロージョンの魔法だ。しかし・・・かろうじて生きている。
ポーションで体力を回復していなかったら今の一撃で死んでいただろう。
直後に先程の包帯の効果が現れ、怪我が癒されていく。危なかったぜ・・・
街の外に出てリッチがやってくるのを待ちかまえている間に、念のため魔法での治療を試みる。
包帯治療で治りきらなかった傷が全てふさがってゆく。
それを確かめた後、ハルバードを構え直す。
万全の体制を整えて待ちかまえていると・・・遂に奴がやってきた。
奴はまだ俺の力を見くびっているようだ。不気味な笑い声を上げ、俺の方に近づいてきた。
俺はハルバードを振りかざし、奴に突進した。そしてすれ違いざまハルバードを振り下ろす!
よし、手応えあり!
リッチは再び俺に魔法攻撃を開始した。
エクスプロージョンやエナジーボルトの猛攻を包帯治療でしのぎつつ、奴と何度も斬り結ぶ。
フレイムストライクもなんとか持ちこたえて反撃を続けていると、奴の動きが目に見えて鈍くなってきた。
奴の魔法攻撃も徐々に威力が落ちてきている。
勝てる!
しかしここで油断して思わぬ反撃を喰らうのは危険だ。
リッチに攻撃を命中させることにのみ意識を集中させて何度も攻撃を続けていると、
確かな手応えと共にリッチが逃げ始めた。
とどめの一撃!
奴は断末魔の悲鳴を上げ、ゆっくりと倒れていった。
そして地面に倒れ伏し、リッチはピクリとも動かなくなった・・・
遂にリッチを倒したぞ!
何度か危険な状況になったが、それを乗り切って倒したという達成感は何物にも代え難い。
今はこの勝利の余韻を味わうことにしよう・・・
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