Deal・ミズホ武芸帳

第7話 「秘策 − デスパイズ −」

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街に戻ってきた俺は、その足で魔法屋へ向かった。

そしてある呪文のスクロールと、その呪文を使うために必要な秘薬を購入して宿屋へと向かった。

宿屋で部屋を借りて、自分の呪文書に買ってきたスクロールの呪文を書き写す。

魔法を使うためには両手を空けなくてはいけない。

そこで、戦闘中に素早く剣と盾を手放したり装備したりする動作を練習した。

よし、準備はできた。

これからゆっくり休んで、明日の朝から再び修行に出掛けよう。


次の日の朝、俺は装備を整えて再びデスパイズへと向かった。

そして地下2Fへの階段を降り、敵の姿を探す。・・・いた。

相手もすぐにこちらに気付いたようだ。武器を振りかざし、エティンが1体襲いかかってくる。

1体のエティン程度ならほとんど無傷で倒せるようになってきた。

やがて戦いの音を聞きつけたのか、2体のエティンがこちらに近づいてきた。

その2体が辿り着く前に、それまで戦っていたエティンにとどめを刺すことができたので、

俺は近づいてくるうちの1体に精神を集中した。

そして先程呪文書に書き写した呪文を発動させる。

In Nox!

途端にエティンの顔色が悪くなる。

それはそうだ。ポイズンの呪文でヤツの体内に毒を発生させたのだから!

そして俺はすかさず剣と盾を装備し、そいつに斬りかかる。

思った通り、毒の効果が消える前にそいつを倒すことができた。

そして残るもう1体のエティンも刀の露と消えた・・・


俺の考えた一対多数の時の秘策、それは自分の魔力を生かした呪文(特にポイズン)による戦闘サポートだ。

ブリタニアのモンスターはいずれも高い治癒能力を持っている。

その能力の高さは、生半可な攻撃力の武器だと斬りつけた直後に即座に傷がふさがるほどだ。

しかし体内に毒素がある場合はさすがにそうはいかないらしく、ダメージの自然回復を抑えることができる。

呪文詠唱時と剣と盾を装備し直すときに多少隙はできるが、

相手の攻撃を受けない距離さえ見極めればリスクは最小限にできる。

他にもファイヤーフィールドやポイズンフィールドを使って、より攻撃力を高める方法も試してみたが、

これらの呪文がすんなり成功するほど俺の魔力は高くないし、消費する秘薬も馬鹿にならない。

やはり攻撃中の1体にポイズン。俺にはこれぐらいでちょうどいい。


その後もこの戦法で危なげなく敵を倒していった。

4体同時に襲われても1体倒すまでの時間が短縮できるので、その分攻撃を受けにくくていい。

こうしてしばらくの間、エティンやアースエレメンタルを相手に剣技を磨いていった。

戦利品入れのカバンが金と宝石でいっぱいになった。そろそろ撤収しようか・・・

アクシデントはそんなときに起こった。

ガチャン!

なにかが壊れる音がすぐ近くで聞こえた。

それと同時に、今まで俺の身を守ってくれていた骨アーマーが、バラバラと地面に落下する。

どうやら遂に鎧としての寿命がきたらしい。

しかしそれを惜しんでいる暇はなかった。

防御力が下がったからといって、敵は攻撃の手を緩めてくれるわけではないのだ。

敵の攻撃を盾で受け流しつつ、俺は後退した。

幸い奴らの足は遅い。俺は奴らの間を悠々と駆け抜け、洞窟の外へと出た。

やれやれ、鎧を新調しないといけないな。


その後、俺は一旦街に戻り、戦利品を銀行に預けて防具屋に向かった。

そこでプレートアーマーを購入し、早速着込んでみる。

ふむ、着心地はこれまでの骨アーマーとそれほど変わらないな。剣も振りやすい。

買ったばかりでまだ傷一つ無いプレートアーマーを見ていると、無性に戦いに赴きたくなった。

もう少しだけ行ってみるか。鎧の強度を確認しないといけないからな。

と、無理矢理理由を作って自分を納得させる。

そして秘薬、包帯の残量を確認し、俺は再びデスパイズへとリコールした・・・


新しい鎧を手に入れた高揚感からか、それともただ単に新しい場所に行ってみたかったのか

今となってはもう思い出せないが、俺はデスパイズの地下3Fにきていた。

事前の知識では、このフロアにはオーガやトロル、サイクロピンウォーリアーやオーガロードが出没するようだ。

いずれにせよ、まだそのどれとも戦ったことはなかったが。

まだ見ぬ敵を警戒をしながら歩を進めると・・・トロルを発見した。

俺はすかさず剣を抜き、そいつに斬りかかっていった。

やがて地面に倒れ伏すトロル。どうやらエティンと同程度の実力しかないようだ。


[Deal > トロル]


その後、道に迷わないように注意しながら洞窟を奧へ奥へと進んで行く。

途中で何体かエティンやトロルを見かけたが、すでに奴らの実力は知れている。

Marbleの足を持ってすれば、奴らを振り切るのはたやすい。

こうして俺は洞窟の最深部とおぼしき場所に到達した。

床に巨人族の死体が倒れている。これは・・・サイクロピンウォーリアーのようだ。

こいつらを相手に腕試しをしてみよう。

俺はしばらく待ってみることにした。

ぞくり

強烈な殺気が俺を包み込んだ・・・! なにかが近くにいる?!

その殺気は通路の奧から感じた。まだそいつの姿は見えないが、俺の勘は今すぐ逃げろと言っている!

やがて・・・

通路の奧から・・・

のそりと姿を現す巨大な姿! こ、こいつはタイタンか?!

サイクロピンウォーリアーに姿は似ているが、こいつの強さは半端じゃない!

洞窟の天井近くにあるその巨大な一ツ目が、ぎょろりと俺を見下ろした。

その瞬間、俺は後ろも見ずに逃げ出した!

自分の実力は分かっているつもりだ。そして今の俺では戦っても無駄死にするだけだ。

幸い俺に魔法を使う気までは無かったようで、なんとか無事に逃げ切ることができた・・・

安全な場所まで辿り着き、元々のここに来た目的は達した事に思い至り、

その日はもう街に戻って休むことにした。

いつか・・・いつか奴にも勝てるようになってやる!


[タイタン > Deal]




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