Deal・ミズホ武芸帳

第1話 「Deal誕生 − 冒険前夜 −」 

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俺の名前はDeal。剣士として名を上げるためこの町、ヴェスパーにやってきた。

もっとも剣の腕はまだまだだ。むしろ魔法と治療、そして音楽の才能に恵まれているらしい。

だがまぁ剣の腕はこれからの修行で上げていけばいい。

それに冒険者としては駆け出しだが、ブリタニアで生きていく知識はそれなりに身につけているつもりだ。

田舎から出てきたばかりでまだまだ知り合いは少ないが、それもこれから少しずつ増やせばいいさ。

さて、この町にやってきたのは故郷から一番近い街ということもあるが、ある知り合いに会うためでもある。

ふとしたことで知り合ったHIGE Lady嬢が家を手に入れたということなので、その家を見せてもらうのだ。

待ち合わせの場所へ急ぐと・・・ああ、いたいた。馬に乗ったHIGE Lady嬢を発見。

おや? 隣の女性は?

「こんばんわー、Yuiです!」

あぁ、HIGE Lady嬢の知り合いか。初めまして、Dealです。よろしく。

待ち合わせの場所に建っているこの建物は、HIGE Lady嬢が属するギルドのギルドハウスだそうだ。

俺もいつか自分の家を持ちたいものだ。もっともそれはまだ夢のまた夢だがな・・・

ギルドハウスの中は店になっているらしい。何人も店員がいて品物を見せてくれる。

「これから自宅に飛ぶので、リコールのスクロールを買って下さいな」とHIGE嬢。

これか・・・? 10本セットで450Gp。現在の所持金は1000Gp。

うーん、10本もいらないのだが・・・しかし店員はバラ売りはできないという。

しばらく10本のスクロールを前に腕組みしてうなっていると・・・

「私が買った分を分けてあげましょうか?」とYui嬢。

それではお言葉に甘えて、1本分金の45Gpを手渡しする。

・・・おや? 5本あるようだが・・・?

「失敗するかもしれないんで、差し上げますよ」

初めて会った俺に・・・あんたはいい人だな。早速呪文書に登録する。よし、準備はできたぜ。

そして俺達はHIGE嬢の自宅へと呪文で移動した。



沼地の中に建っているのか。リザードマンや大蛇、ワニが家の周りを徘徊している。

俺に気をつけろ、と言っていたのはそういうわけだったのか。思わず苦笑が広がる。

・・・ではお邪魔するよ。

ほう、部屋の真ん中にカウンターがあるのか! 酒場のような造りだな。

へぇ、将来的にはバーテンを雇って酒場にするのかい? いいね、開店したら寄らせてもらうよ。

この家は買ったばかりでまだ家具とかほとんど置いていない。今度来るのが楽しみだ。

それからしばらく、カウンターのスツールに座って他愛のない話をして過ごした。

もっとも俺は愛用の楽器を調律したり、荷物の整理をしながらだったからもっぱら聞き役さ。

さて・・・家も見せてもらったし、そろそろ俺は帰ることにするよ。

2人とも今日は色々世話になったな。感謝するぜ。・・・じゃあ、またな!



ヴェスパーに戻ってきた俺は、その足で首都ブリテンに向かうことにした。

どうせ一人旅だ。簡単に目的地が変えられるこの気楽さはいい。

それにヴェスパーとは比べモノにならない人が生活している街だ。

ある目的のためには人が多い街の方がいい。俺は銀行へと向かった。

その目的とは、銀行前に落ちているアイテムを拾うことだ。

恥ずかしい話、俺には鍛冶や大工の才能はない。つまり働いて金を稼ぐことができないのだ。

もちろんダンジョンなどでモンスターを退治して収入を得ればいいのだが、

まだまだ駆け出しの俺がモンスターと戦っても、返り討ちにあうのがオチだ。

そこで武器や防具、その他の生活必需品はこうして銀行前に捨てられているものでまかなって、

少しでも金を節約しようと思ったわけだ。



我ながら格好悪い行動だと思うが、背に腹は代えられない。

一応人が立っている側のモノを拾うときには、一声かけるようにした。

すると大抵の人は拾っていい、と言ってくれる。たまに返事が返ってこない人もいるが、まぁOKということだろう。

こうして集めてみると結構な種類と量になるものだ。

骨アーマーのセットも手に入ったし、どんな効果かは分からないが、魔法の付与された武器や防具も手に入った。

その後不要なアイテムを売り払うとそれなりの金額になる。ありがたいことだ。

今は拾いモノをしているが、いつか他人に施せるようになってやろう。その時、心にそう誓った・・・



モノを売り払うついでに、商人ギルドでアイテムの鑑定技術を習うことにした。

これで魔法のアイテムの効果が分かるようになったので、拾った魔法のアイテムを鑑定してみることにする。

するとどうだ! かなり強力な効果の魔剣が混じってるじゃないか! こいつはありがたい。

苦労して銀行の屋上から拾ってきた甲斐があったぜ!

他にも、ちょっとした防御呪文の付与された魔法の防具や、回復呪文の付与されたワンドもあった。

これだけ装備が整えばすぐにでも修行に出られるな。

しかし焦りは禁物だ。

強力な装備を手に入れたと言っても、今の自分にそれを使いこなす技量がないことは、

俺自身が一番良く知っている。

はやる気持ちを抑え、今日のところは疲れを癒すため休むことにする。

しかし・・・今日は色々あったな。

まー頑張るさ。



戦績:なし

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