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□┓ 第八話(最終話)
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「新月さん、なにしみじみとピンクナデシコ眺めてるんですか」
そんなギルメンの声で我に返る。
そうだ、俺たちはこれからギル活に出発するところだった。
俺はピンクナデシコを元の袋に入れ、ようやく見つけた包帯の束を掴んで立ち上がった。
その時家の前にゲートが開き、中からドラゴンの顔がぬっと現れる。
そしてゲートから飼い主が元気よく飛び出して、
「ししょー! みなさーん! おまたせでーす!」
そう言いながら立位体前屈かってぐらい深々とお辞儀を繰り返し、そのたびにポニーテールがピョンピョンと跳ね上がる。
「遅いぞミヅキ。なにしてた?」
「あ……えーっと、それは……」
そう言って胸の前で白棒を抱え、困ったように目をそらしてもじもじする。
「包帯がなかなか見つからなくて(^▽^;)」
そう、ミヅキは帰ってきた。
そもそもこいつは引退したわけではなかった。
大学の卒論を仕上げるまでの期間、休止していただけだったのだ。
いくら文章を書くのが苦手って言っても、あの書き方は紛らわしすぎるだろ、おい……
卒論の話はミヅキが復帰した日にフィオナさんから聞かされた。
俺と連絡が取れなかったミヅキはフィオナさんに伝言を頼んだそうだが、あのアル中ギルミスの野郎わざと黙っていやがった。
『あれ? 言ってなかったっけ〜? ごめんごめーん!
まぁいいじゃん! シンちゃんの愛しいミヅキっちが帰ってきたんだからぁ♪』
とか言って、俺が動揺している間にうやむやにされてしまった。
いつかうっかりタゲミスってやる。
結局2か月ほどで復帰したミヅキはテイム修行に励み、今ではグレータードラゴンを扱えるほどの腕前になっていた。
スキル構成もすっかりテイマーメイジのそれに変わり、“戦士ミヅキ”の姿はもうそこにはなかった。
しかし包帯スキルは残していて、以前と変わらず前線に立って、盾役の俺とドラゴンに包帯を巻いてくれる。
ドラゴンと一緒に突撃する俺の姿を見てギルメンは、『コントロールスロット0のペット』とか『師匠からペットに昇格した(ご褒美的な意味で)』などとからかってくる。
今日も、
「ミヅキさんは新月さん専属獣医ね!」
などとイジられる。……獣医ってどーゆーことだコラァ!?
するとミヅキも調子に乗って、
「りょーかいでーす! ししょー Follow me! ししょー
Guard me!」
「がう!」
「きゃー、機嫌が下がった〜!
ししょー Love me!*Chu*」
「っ! おまえひとまえでそうゆうこと111」
「わーい、親愛度が上がった〜(>▽<)」
リアルで顔が熱くなったわ!
周りのギルメンはまた始まった、という顔で笑っている。
「こぉら、このばか夫婦! いい加減出発するよっ」
フィオナさんの号令で、メイジたちが目的地へ移動するゲートの呪文を唱え始める。
……そうなのだ、俺とミヅキはその後無事UO婚を挙げることができたのだ。
ちなみに、かなり前からUO婚をするのにピンクナデシコはいらなくなったらしい。
ミヅキが休止した話を聞きに行ったとき、フィオナさんが面喰った顔をしたのはそういうわけだ。
だーかーらー、その場で言ってくれよそーゆーことはっ!
「さぁししょー、いきますよっ」
そう言ってミヅキが差し出した手を俺は掴む。
出会ったころは俺が先に立ってミヅキを引っ張っていたが、いつの間にか立場は逆転していたらしい。
ムーングロウの森を吹き抜ける爽やかな風を感じながら、俺たちはゲートに飛び込んだ。
このゲートの先、そして俺たち二人の未来には、数々の冒険が待ちかまえていることだろう。
これからもずっと、俺たちは共に歩んでいきたいと思っている。
もう、二度とこの手を離すものか。
〜 Fin 〜
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