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□┓ 第七話
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俺は金色の髑髏を手に、単身DOOMに来ていた。
この金髑髏はいつかミヅキをDOOMに連れて行ってやろうと用意していたものだ。
あいつがいなくなった今となっては、とっておいても仕方がないものだ。
フィオナさんは、
『ミヅキがいなくなった責任をシンちゃんが感じる必要ないわよ』
と言ってくれたが、俺にはそう割り切ることはできなかった。
だからこれは一種のケジメ、禊みたいなものだ。
DOOMのボスたちにソロで挑む。
いつも隣にミヅキがいることに頼りきっていた自分に喝を入れるのだ。
あるいは俺は、ミヅキに悲しい思いをさせてしまった自分に罰を与えたかったのかもしれない。
こんな事他人から見たら馬鹿馬鹿しいこだわりなのかもしれないが、俺が次の一歩を踏み出すためには必要な儀式だった。
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DOOMの渡し守に金髑髏を手渡し、対岸に到着した。
最初の相手はDarknight Creeperだ。
俺が部屋に入ると、部屋の中央で粘液に濡れた肌色のぶよぶよした巨体が起き上がる。
俺はアンデッド特効大小を構えて懐に飛び込み、マナの続く限りDouble
Strikeを叩き込む!
Darknight Creeperの攻撃を受け、俺の体は強力な毒に侵されてしまう。
いつもならミヅキがすぐに包帯で解毒してくれるのだが、自分に巻く包帯のなんと遅いことか!
大小に付加されたライフリーチと解毒ポーションの力を借りてなんとかしのぎきる。
そしてがむしゃらに攻撃を繰り返し、Darknight
Creeperを打ち倒すことができた。
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次の相手はFlesh Rendererだ。
部屋に入った途端、奥の物陰からものすごいスピードで襲い掛かってきた!
俺は炎属性100%の大小に持ち替えて、鋭い牙による噛みつき攻撃を受け止めた。
しかし勢いの乗った一撃だったため、俺は後ろに弾き飛ばされて転倒してしまう。
すかさず追撃してくるFlesh Rendererの鋭い節足を、俺はフェイントを交えてかろうじて回避する。
今までだったらミヅキがすかさず間に割って入ってフォローしてくれるところだ。
体勢を立て直した俺はFlesh Rendererに飛びかかる。
その素早い動きもこちらが体勢を整えて対応すれば大した脅威ではない。
瀕死になって逃げようとしたFlesh Rendererの背にとどめの一撃を加え、俺は次の部屋に向かった。
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続いて現れたImpalerが両腕の鋭い鎌を振り回して攻撃してくる。
回避しきれなかった攻撃により体のあちこちが切り裂かれ、激しく出血し始める。
その鋭い切っ先による傷は冒険者の強靭な肉体でなければ致命傷になっていたことだろう。
状態異常を起こすImpalerの特殊攻撃により、包帯だけではHPを回復しきれない。
こんな時ミヅキがいてくれたら、二人で包帯を巻きあって簡単に対処できるのだが……
俺は一旦距離を取り、戦い方をヒット&アウェイに切り替えた。
常に自分のHP残量とステータス状態に注意しながら何度も斬り結ぶ。
多少時間はかかったが、最後はすれ違いざまのDouble
Strikeで決着がついた。
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次の部屋に入ったが、ボスの姿はなかった。
警戒しながら部屋の中央に進むと、突然背後から斬りつけられた!
Shadow Knightだ!
その名の通り、影に潜んで攻撃してくる厄介な相手だ。
ミヅキと二人でいた時はお互いの背中を守りながら戦うことができた。
今更ながら背中を預けられる相手がいたことのありがたさを感じる。
姿を現したShadow Knightに駆け寄って何度か攻撃を加えると、奴はテレポートエフェクトとともに姿を隠した。
俺は爆弾ポーションを取り出し、隠れていそうな場所に目星をつけて放り投げる。
ポーションが爆発し、爆風にひるんだShadow
Knightが姿を現したところに駆け寄って攻撃!
Shadow Knightが隠れるたびに爆弾であぶり出し、再度隠れようとしたところを追撃して止めを刺した。
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最後の部屋に入ると、巨大な頭足類のような姿のAbyssmal
Horrorがうねうねと近づいてきた。
こいつは動きが遅いが見た目に反して魔力が高く、魔法攻撃の威力は侮れない。
攻撃は最大の防御! 短期決戦あるのみだ。
一気に接近して、悪魔特効大小によるDouble
Strikeの連続攻撃を繰り出した。
突然俺の体が猛烈な炎に包まれた。Flame Strikeだ!
そして目の前の空間が揺らいだかと思った瞬間、俺を中心に爆発が起きた!
爆風に吹き飛ばされた俺に、追撃の魔法攻撃を加えようとする気配がした。
俺の連続攻撃によってAbyssmal HorrorのHPも残り少ない。
もう一人分の攻撃力があれば……ミヅキが一緒に攻撃してくれていれば……
俺の残りHPは僅かだ。もはやここまでか!?
再び俺の周囲に猛烈な勢いの炎が現れた。
「まだだあああぁぁーーーーーーーーっ!!!」
俺は咄嗟にEvasionを使い、紙一重でFlame
Strikeの猛火を避けた!
そのままAbyssmal Horrorの懐に飛び込んで、最後のマナを使ってDouble
Strikeを繰り出した!
Abyssmal Horrorの胴体に2つの刃がめり込む。
俺に反撃しようと伸ばしかけていた触椀が力を失って床に垂れ、続いてその巨体が地響きを立てて崩れ落ちた。
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俺は広間に向かって歩いた。いよいよ大ボス、Dark
Fatherの登場だ。
武器をDouble Axeに持ち替える。
Dark Fatherの召喚するアンデッド軍団をまとめて相手するのにうってつけの武器だ。
エリア攻撃と追加魔法が付加されたBlack Staffを愛用していたミヅキは、ボス湧きの雑魚退治が得意だった。
『てやーーーー! めがまわるぅぅーーー!!!(@▽@)』
そんな掛け声と共にBlack Staffを振り回していたミヅキの姿が今でも目に浮かぶ。
しかし今の俺は雑魚も全部一人で相手しなくてはいけない。
広間の中央で異形の巨体がのそりと起き上がった。
俺は一気に駆け寄ってすれ違いざまに斧を叩き込み、そのまま壁際まで走った。
そして壁を背にして振り返り、斧を構えた。
これで背後からの攻撃を気にしなくても良くなった。
怒りの雄たけびを上げ、Dark Fatherが突進してくるのをDouble
Strikeで迎え撃つ。
召喚アンデッドに周りを取り囲まれると、Whirlwind
Attackで一気に蹴散らした。
斧に付加されたマナリーチやスタミナリーチのお蔭で常にベストコンディションで安定して戦える。
だが俺は油断することなく戦いに集中し続けた。
Dark FatherのHPは残り僅かとなり、次の攻撃で止めになるはずだった。
俺はDouble Strikeを叩き込むべく大きく振りかぶり、力の限りに斬りかかった。
その瞬間、まるで邪悪な鉤爪に魂を掴まれたようなひどく不快な感覚に襲われた。
まさかBlood Oath!?
時すでに遅く、もう攻撃の手を止める事はできなかった。
Dark Fatherに斧が当たった瞬間、俺に強烈なダメージが返ってきた!
だが俺は歯を食いしばって激痛に耐え、体を反転させる勢いで二撃目を叩き込む!
「なめるなああああああ!!!」
Dark Fatherの体に斧が食い込む手ごたえを感じた直後、俺の視界は暗転した。
俺が最後に見た光景は、斧に付加されていたLightningの呪文の発動により、黒こげになって倒れていくDark
Fatherの姿だった……
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蘇生部屋で生き返って装備を身に着けていると、カバンの中にStaff
of the Magi、通称白棒が入っているのに気が付いた。
Dark Fatherと相討ちした時に出現したようだ。
そういえばミヅキはBlack Staffが好きだったなぁ。
禊のつもりで挑んだDOOMソロだったが、振り返ってみれば頭に浮かんでくるのはミヅキとの思い出ばかりだった。
そんな自分の未練がましさに苦笑いする。
だが別にそれでいいじゃないか。
ミヅキを忘れる必要なんてどこにある?
今が辛いからって、楽しかった思い出まで辛いものに書き換えるなんて馬鹿馬鹿しい。
俺の心の中にあったわだかまりはすっかり消えていた。
過去の失敗をいつまでも悔やむのではなく、次のチャンスで失敗しないよう備えるべきだ。
俺はミヅキの真似をして白棒を振り回してみた。
ゴツン!
「いてぇ!」
ふふ、慣れないことをするもんじゃないな。
俺はたんこぶをさすりながら、晴れ晴れとした気分でDOOMを後にした。
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