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□┓  第四話
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『あー、いいですねぇ〜、UO婚』

 そんなミヅキの言葉が思い出される。

 正直言うと俺だってUO婚には少なからず興味があった。

 とはいえ俺が興味あるのはあくまでゲーム内イベントとしての“結婚”であって、別にリアルでつきあいたいとかそういう気持ちは無かった。

 例えば『いつか城に住んでみたい』とか『全てのモンスをタイマンで倒す』みたいな、UOプレイヤーがよく挙げる夢。

 そんな『いつかやってみたい、叶えたい夢』としての“UO婚”に興味があったのだ。

 そしてミヅキもUO婚に興味があると知った俺が思いついたアイデアはこうだ。

『師匠としてミヅキにUO婚という貴重な経験をさせてやろう』

 俺は具体的な計画を考え始めた。

 ドラマや映画でよくあるプロポーズのシーンは、彼女に内緒で用意した指輪をロマンチックなシチュエーションで渡すってのが定番だ。

 UOで結婚指輪をもらうには、ピンクナデシコを2株用意しなくてはいけない。

 俺もドラマの主人公たちに倣って、ミヅキに内緒でピンクナデシコを手に入れることにした。


 後になって思い返すたび、あの時俺はなぜミヅキに一言相談しなかったのだろうと考える。

 いくらゲーム内のこととはいえ、告白すらしていない相手にいきなりプロポーズしようなんて、我ながらどうかしていたと思う。

 もっとも当時の俺はミヅキのことを「相棒」のような感覚でいた。

 だから結婚指輪も“相棒の印”とか“記念品”ぐらいの軽い気持ちで考えていたんだ。

 俺はミヅキを驚かせたかった。

 俺はミヅキの驚いた顔が好きだった。

 初めて出会ったあの日、ムーングロウのコットン畑で目を真ん丸にして俺を見上げていたミヅキ。

 修行を始めたばかりの頃、俺が教えるUO知識にいちいち驚き、一生懸命覚えようとする姿。

 そんなミヅキの反応が俺は好きだった。

 だから俺がピンクナデシコ渡したら、きっといつものように驚き、喜んでくれるに違いない。

 それまで俺が頼んだ事やした事で、ミヅキが断ったり嫌な顔をしたことは一度もなかった。

 だからいきなりUO婚を申し込んでもミヅキは快くOKしてくれると信じて疑わなかった。


 今でも思う。

 もしあの時ミヅキにちゃんと話をしていたらどうなっていただろうと。


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