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□┓ 第三話
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UO婚とは運営のサポートによって行われる、プレーヤーキャラクター同士の結婚式だ。
結婚するキャラクターのプレーヤー同士が実際夫婦だったり恋人同士だったりすることもあるが、リアルで会ったことのない者同士でするのも珍しいことじゃなかった。
ちなみにこのとき式を挙げたギルメンの二人はリアルで夫婦とのことだった。
結婚式は滞りなく終わり、披露宴で新郎が毒殺されかけたぐらいで大したトラブルもなく済んだ。
その後の二次会も終わりに近づき、会場に残っているのは俺とミヅキを含めて10人前後。
お祭り騒ぎが終わったあと特有の、なんとなく立ち去り難い心地よい空気の中、俺たちは雑談していた。
ミヅキは珍しく酔っ払って歌いだしたり酒瓶を投げつけたりして、いつになくはしゃいでいた。
「おんやぁ〜? シンちゃんはお酒無くなっちゃった〜?」
そう言って俺のテーブルに強烈ビールの樽をドスンと置いたのは、うちのギルドのギルミスのフィオナさんだ。
「シンちゃんはヤメロ。って酒くせぇよ!*ヒック*
うぉ、匂いだけで酔っちまった!」
フィオナさんにはヤング時代から世話になっていて、その頃の名残で今でも俺は“シンちゃん”扱いだ。
姉御肌で面倒見が良くて、ギルメンの相談にも乗ってくれる素晴らしいギルミスだ。
酒が絡まなきゃな。
「あははは! 腹ごなしに毒ポーション一気飲みいくかー!? さぁミヅキも呑め呑めー!」
今夜もリアルで飲んでると言ってたからタチが悪い。
ミヅキが渡されたスピリッツを一気飲みするのをハラハラしながら見守っていると、
「ところであんたたちはUO婚しないの?」
「ごほっ!?」
俺は飲んでたワインを吹き出した。
い、いきなりなに言い出すんだこの酔っぱらいはっ!?
「あー、いいですねぇ〜、UO婚(〃▽〃)」
ミヅキが食いついた!?
「UO婚は女の子の憧れよね〜」
「そうですね〜」
そういって二人は「*遠い目*」なんて言いながら酒を酌み交わし、
「*ひそひそ*」
「*ガールズトークを開始しました*」
などと俺そっちのけで楽しそうに喋っている。
なんだか居心地が悪くなってきたので、
「フィオナさんだってUO婚すればいいじゃないか。ほら、オークダンジョンの奥で彼氏が待ってるぞ?」
と茶化すと、
「あ〜ん、たのもしいわ! あたしのブルりん!
……ってばか! オーク投げるぞ!」
「あんたの方がブルートかよ!? じゃあ黒鉱石くれよ!」
「黒鉱石の代わりに山羊さんと一緒に大量のブラックロックをプレゼントするわ」
「おお、黒い粒々がいっぱい……ってそれ、絶対違うモノじゃね!?」
「あはははー! ししょー達おかしいー!*ヒック*」
隣で酔っ払ったミヅキが笑い転げる。
……とりあえずUO婚から話題を変えることに成功した。
正直言って恋愛ネタでからかわれるのは苦手だ。
うちのギルメンはそれを知ってて面白がっているからタチが悪い。
その後しばらくして二次会はお開きとなり、残っていた者もそれぞれの家へと帰って行った。
「それではししょー、おやすみなさーい(*^▽^*)ノシ」
「ああ、おつかれさん」
ミヅキがSacred Journeyで帰るのを見届けて俺も自宅へ飛ぼうとした時、あるアイデアが頭に浮かんだ。
この時はいい思いつきだと俺は思っていたんだ。
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